雪の力で冷やした天然の冷蔵庫で食品を保存する、雪国古来の知恵。
室内は温度0℃・湿度90%以上の一定した環境で、電気振動がなく光や乾燥による食品への影響が少ないため、鮮度を保ち美味しさを向上します。
米や野菜はでんぷん糖化で甘くなり、肉はドリップが少ない良質な熟成肉に。
また酒や珈琲などは熟成時に発生する不快臭(アルデヒド類)が雪の力で抑えられ、まろやかに変化することが研究で立証されています。
雪室の内部は、35度の真夏であっても-8度の真冬であっても、通年を通して温度が一定となります。
雪室の構造によって0度の雪室、5度の雪室、など一定温度の違いはありますが、通年を通して温度のゆらぎがありません。
冷蔵庫は平均4.8度を保つためにサーモスタットが起動し、10度~-1度の間で温度のゆらぎを起こします。
その温度差により食品の細胞が傷みやすくなり、美味しさの維持に影響があります。
また雪室は湿度90%以上の高湿度環境です。湿度の高いうるおい空間のなかで食品保存することで、乾燥を防ぎ鮮度を維持します。
低温・高湿度環境の雪室は湿度の低い冷蔵庫と比べ、圧倒的な鮮度保持能力があり、元々の新鮮さに近い状態での保存が可能なのです。
雪室は自然エネルギーである雪を活用するため、電気の振動がありません。
また冷蔵庫のような開け閉めによる光の変動、温度の変動も受けません。
この外部からの影響を受けない状態を「静置(せいち)」といいます。
静置状態に置かれた食品は、ストレスが少ないため状態の良い熟成をすると言われています。
静置状態で良い熟成を行った食材たちの中で、味覚に変化を及ぼす食品があります。
例えば野菜、米などの穀類は寒さからこおらないよう身を守るため、体内のでんぷんを糖分に変化させます。
これを糖化現象といいこの作用により食品が甘くなるのです。
また雑味がとれる、苦味が抑えられるといった味覚の変化を起こす食品が存在します。
昔から雪中貯蔵と言われお酒などが有名ですが、不思議と味がとろりとまろやかになるなど、様々な変化をします。
この雪がもたらす味覚の変化を数値的に解明していくため、各種学術研究機関と連携して成分調査を進めています。
雪低温状態に置かれた食品、特に細胞の生きている状態のものは寒さに耐えるため、呼吸を控えます。
このプチ冬眠といえる状態は、食品の劣化・酸化を抑えます。
雪室は雪を再利用する、自然リサイクルエネルギーです。
雪は生活をしていく上で厄介なものですが、雪国新潟では「利雪=雪を利用し、共存する」という考え方が発展してきました。
50年ほど前に電気冷蔵庫の発展により廃れかけた雪室は、エコの意識の高まる現在、大きく見直されてきています。
雪を1トン利用することで、石油を10リットル、CO2を30kg削減すると言われています。
1個の雪室に入れる雪の量は年間400トン~700トンです。かなりの削減になりますよね。